農家の嫁の日記

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がんばれ日本!!

zoom RSS 戦う君に、花束を 37

<<   作成日時 : 2017/02/09 00:47   >>

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「まず、9時より、朝の執務を執り行っていただきます」

 と、まあ、ここまでは普通だった。

「そのあと、9時半より日本のテレビ局の取材、10時より某国の外務大臣との謁見、議会への出席、そのあと、交換留学生との謁見、そのまま昼食。13時30分より商業、漁業、農業の代表者会議への出席。小学校への視察、午後の執務、謁見20件、そののち夕食、と、なっております」
(ほぼ秒単位だな………)
 ハヤブサが頭を抱えている横で、ナディール姫もあんぐりと口を開けていた。
「ええっ!? そんなに予定があるの!?」
 使いに来た者は、ちらりとナディール姫に視線を走らせると、ゴホン、と、咳払いをした。
「内大臣に言わせると、これでも予定を削られたそうにございます」
「……………!」

「ですから、くれぐれも勝手な行動などはせず─────」

 使いの者がそこまで言ったとき、もう目の前にはナディール姫はいなかった。ハヤブサが強引に連れ出していたからである。
「ハ、ハヤブサ様!?」
「お前は、朝食に口をつけていなかったな? また毒を入れられていたのか?」
 ナディール姫を抱きかかえながら、問うてくるハヤブサに、姫はあいまいにうなずいた。
「え、ええ、まあ………」
「ともに食事をしていた大后とノゾムの様子は普通だったな。彼らの食事に毒を盛られることはないのか?」
「そうですね………」
 ナディール姫は、複雑な表情を浮かべた。
「お義母様とノゾムの食事に、毒を入れられたことはないと思う。もし分かれば、私が止めるから……」
「一つ聞いていいか?」
 ハヤブサの問いかけに、ナディール姫は「どうぞ」とうなずいた。
「お前はどうやって、食事に『毒』が入っているかいないか、見分けているんだ?」

「それは、これです」

 彼女は胸元から、一つの銀スプーンを取り出す。

「この表面は特殊なもので加工されていて───『毒』が食事の中に入っていたら、反応して変色するようになっているんです」

 ほう、と、感心するハヤブサに見せてから、彼女はその銀スプーンを大事そうに胸元にしまった。
「お義母様とノゾムのスプーンにも、同じ物がつかわれています。でも、私のスプーンだけすり替えられていたら困るから、こうして何本かストックを持つようにしているの」
 なるほどな、と、ハヤブサはまた感心した。さすがに、自分が護衛に就くまでに、この環境を生き延びてきただけのことはあるな、と、思った。
「どころでハヤブサ様……」
「どうした?」
「私を抱えて走っていますが、これからどちらへ行かれるご予定ですか?」

「市場だ」

 ハヤブサはぶっきらぼうに答える。
「朝食は、とった方がいい。執務に差し障るぞ」
「え、でも、交換留学生との謁見を兼ねた昼食会は、たぶん料理が食べられると思うから………」
「俺の、食材の調達も兼ねているんだ」
 ナディール姫の反論を、ハヤブサは一言の元に却下した。
「俺の目の前で、空腹で倒れるのは許さん。何が何でも食べてもらうぞ!」
「うそでしょ〜〜〜〜〜〜!?」
 悲鳴を上げている間にも、ナディール姫の身体はハヤブサによって強引に、場外へと持ち出されてしまっているのであった。

 こうして、現在に至る。

「ハヤブサ様……! もっとゆっくり……!」
「ゆっくり優雅に食っている時間なぞあるか! パンは水と一緒に流し込め! これは栄養の補給だ!!」
「そ、そんなこと言われましても………ゲフッ!」
 満足な咀嚼もできず、何度ものどに食事を詰まらせるナディール姫。彼女が市場から自分の部屋に戻ってくる頃には、別の意味で息も絶え絶えになっていた。

「ひ、姫様……。大丈夫ですか……?」

 ロゼッタが、顔を引きつらせながら心配してくる。
「大丈夫、だけど………ちょっと待って………」
 ロゼッタが近づいて来ようとするのを、手で制する。呼吸をゆっくりと整えてから、顔を上げた。
「顔にレタスがついてますよ」
「!!」
 侍従長の指摘に、頬を赤らめながら慌てるナディール姫。頬に手をやると、なるほど確かに、レタスをくっつけてしまっているのが分かった。
「………まったく。姫様は、これから他国のテレビ局の取材を受けるんですよ? 変なところが映らないように、お気をつけくださいますよう」
「わ、分かってるわよ………!」
 小さく唇を尖らせるナディール姫。そんな彼女の服装を整えるべく、ロゼッタが周りを忙しく動き回っていた。
「姫様………どこの国のテレビ局の取材を、受けられるのですか?」
 ロゼッタの問いに、ちょっと考えてから、ナディール姫は答えた。
「確か………『日本』と、言っていたような……」
「日本? ………聞いたことはあるような気がしますが、どこにあるんでしたっけ……?」

「東洋の島国ですよ。ですが、経済大国で、我が国にとっても大切な交易国です」

 ロゼッタの問いに、侍従長がすらすらと答える。
「こうしてマスコミを通して、各国に我が国を知ってもらうことは、大変意義のあることです。ですから、くれぐれも粗相のないように! お願いしますよ! 姫様!!」
 ビシッと言い切られる侍従長の言葉に、ナディール姫は「はぁい」と、少し畏まって返事をしていた。
(日本のマスコミは、いい意味でも悪い意味でも、フットワークが軽いよな……)
 ハヤブサは姫たちの会話を、部屋の外で聞きながら、やれやれとため息を吐いていた。
 そして、この「日本のマスコミの取材」という出来事が、ハヤブサとナディール姫にとって、思わぬ「風」を、呼び込むことになるのであった。

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