農家の嫁の日記

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zoom RSS 戦う君に、花束を 55

<<   作成日時 : 2017/03/02 01:25   >>

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「…………!」
 姫が、ぎゅっ、と、唇をかみしめている。ハヤブサは、さらに質問を続けた。
「お前の役目は、毒を盛るだけか? 人質がどこにいるか知っているのか?」
「ああそうだ! 俺は、姫の料理に毒を盛る係をしていたんだ! ただ、「人質がどこにいるかまでは知らねぇ!!」

「本当か?」

 ハヤブサの問いに、イワンコフはこくこくと、首を縦に振る。
「本当だ!! 知っていたら、俺は絶対に人質の場所を話している!!」
「絶対だな?」
 イワンコフは必死にうなずいていた。
「信じてくれ!! 嘘は言っていねぇ!!」

「ハヤブサ様………」

 ナディール姫が、取りなすようにハヤブサに声をかけてくる。
 涙目で、蒼白な顔色で必死に答えているイワンコフに、情けをかけているのだろう。
(優しすぎるな……)
 そう感じて、ハヤブサは少しため息を吐く。

 こいつは単純な『悪党』だ。
 姫がわざわざ情けをかけるほどの者でもないのに。

「わかった……。姫のとりなしもあることだし、お前が嘘を言っていない、と、信じて………もう一つ、聞く」

「は、はひ………っ!」
 縮み上がりながら返事をするイワンコフを、ハヤブサは睨みつけていた。

「………人質が『生きている』保証は、あるのか?」

「─────!」
「それは………!」

 ハヤブサの言葉に、ナディール姫も、そしてイワンコフも息をのんでいた。『人質』の安否など、保証もされていないし、イワンコフ自身も、さして興味も持っていなかったからだ。
 だが、その疑問には、シェフがいち早く答えていた。

「きっと、人質たちは生きてます………」

「シェフ………!」
「なぜ、それが分かるんだ?」
 ハヤブサの問いかけに、シェフは顔を上げた。
「いつも人質たちに、私の『料理』が届けられていたようなのです」
 
 王や城の者たちの賄いを作っているときに、「いつもより2食余計に作るように」と、指示を出されていた。それを厨房の片隅に置いておくと、いつの間にかその食事がなくなっていて─────

 そして、また知らぬ間に、帰ってくる空の食器。
 その食器の傍らには、小さなメモ書きが添えられていた。

「今日のスープはおいしかったわ、とか、今日のは塩気が多いわね、とか………。その日の料理の感想が、その紙には書き添えられていて………。それが、妻の筆跡だったものですから……」

「間違いないのか?」
 問うハヤブサに、シェフは力強く頷いた。
「ずっと、長年見てきているのです。あれは、妻の筆跡に、間違いありません」
「そうか………」
 その言葉に、ハヤブサはふむ、と、考え込む。

「な、なぁ……! もういいだろう!? いい加減、俺を解放してくれよ!!」

 ハヤブサの束縛が緩んだ瞬間、イワンコフが叫んだ。

「これで、俺の知っていることは全部話した!! もうここからは出ていくし、何があっても、この国には二度と近づかねぇ!! 約束するよ!! だからお願いだ!!」

「………………」
 ハヤブサはそんなイワンコフをじっと見据える。
 確かに、彼から得られる有益な情報は、もう無さそうであるし、彼ははっきり言って小物の類の悪党だ。イワンコフをこのまま拘束していても、意味はないし、こちらのメリットも薄いだろう。
 だがハヤブサは、あえて姫に問いかけていた。

「姫………。お前は、どうする?」

 実際、この場でイワンコフの生殺与奪の権利を握っているのは、ナディール姫だと、ハヤブサは思った。彼女は、シェフの上司にもあたるし、何といっても、イワンコフに直接「毒」を盛られていた彼女は、事実上、一番の被害者でもあるのだ。
 だから、姫自身が望めば、イワンコフに報復する権利が彼女にはある、と、ハヤブサは考えていた。
 しかし
 やはりというべきか────姫は、報復を望まなかった。

「その方を、解放してあげてください……。嘘は言っていないようですし、反省もしているようですから……」

「ひ、姫様!!」

 イワンコフは表情をパッと輝かせていた。

「ありがとうございます!! 姫様にお許しいただいたこのご恩は、決して忘れません!! もう二度と、あなた様の暗殺も企てません!! この通り───神の御前で、お誓い申し上げますです!! はい!!」

(お調子者め!!)
 ハヤブサは内心イラついていた。
 こういうことを言うこの手の悪党が、改心する可能性など、絶望的に低い、ということを、ハヤブサは既に知ってしまっている。この男も、ナディール姫の甘すぎる裁定に、心の中では小躍りして、舌を出しているに決まっているのだ。
 だがもちろん、ナディール姫は裁定を覆さない。彼女の望むままに、ハヤブサは、イワンコフを戒めていた縄を、解いていた。

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