農家の嫁の日記

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災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS 戦う君に、花束を 84

<<   作成日時 : 2017/04/04 01:05   >>

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「しまった!」
「姫様!!」

 誰もが、襲い来る悲劇的な予感に、悲鳴を上げる。
 だがその悲劇は、あっさり回避されていた。ちょうど下に、龍の忍者がいたからである。

「おっと…………」

 ハヤブサは、落ちてくるナディール姫の身体を、難なくキャッチしていた。
「ハヤブサ様………!」
「大丈夫か?」
 受け止められて、驚いているナディール姫に、ハヤブサは声をかける。その横を、物体がものすごい勢いで駆け下りて行って、下の方で止まっていた。よほど急ブレーキをかけたのだろう。はずみで崩れ落ちた岩が、勢いよく水面に落ち、バシャバシャと、派手な波音を立てていた。
「うわっ、とと………」
 下の方で体勢を立て直しているのが、シュバルツである、と、気づいたハヤブサは、あきれたように声をかけていた。
「シュバルツ……。大丈夫か?」
 それに対してシュバルツは、多少苦笑しながらも、ハヤブサにひらひらと、手を振ってこたえる。
「いや、彼女が落ちたから………。でも、無事ならば、よかった………」
 それに対して、ハヤブサはやれやれ、と、ため息を吐く。
(ちゃんと、フォローに走っていたんだな……。律儀な奴だ………)
 そういうところも『好ましい』と、思ってしまうから、本当に困ってしまう。
 どうやって───この愛おしさを、こらえればいい、と、言うのだろう。

「先に上がっている。後からゆっくり来い」

 ハヤブサは、そうシュバルツに声をかけて、姫を抱きかかえながら崖を登り始めた。シュバルツは、そのハヤブサの言葉に、手を上げて応えていた。


 ナディール姫が、ハヤブサとともに上に上がると、ミレイとロアンヌが、シェフと対面を果たしていた。

「すまない………っ! みんな………! よく、無事で………っ!」
「良人(あなた)………」
「父さん………!」

 親子は歓喜の涙を流しながら、たがいに抱きしめあい、無事を確認しあっている。

(良かった………)

 ナディール姫は、その姿を見ながら、ホッと胸をなでおろす。それと同時に、締め付けられるような痛みも感じた。
 この家族を、こんなひどい目に遭わせてしまったのは、紛れもなく、自分のせいだからだ。

 自分が、生きているせいで。
 自分が、命を狙われているせいで─────

(お前は、生きているだけで、周りに迷惑をかけている存在なんだ)

 厨房で言われた言葉が、胸によぎって、ナディール姫は何時しか、唇を強くかみしめていた。そんなとき、彼女に声をかけてくる者がいた。

「姫様………」

「イガール………」

 ナディール姫が振り向くと、イガールが、ひどく申し訳なさそうな顔をして、たたずんでいた。
「姫様………。先ほどは、申し訳ございません………!」
「え…………?」
 少し戸惑うナディール姫に向かって、イガールは頭を下げ、言葉をつづけた。
「姫様のお手を、しっかりと取れず………」
「いえ、それは違います! イガール!」
 はじかれたように、ナディール姫は叫ぶ。
「貴方のせいではありません! 私が、貴方の手を、しっかりと握れなかったから────!」

「落ちていく貴女を見た時………『死んでしまったか』と、思いました………」

「………………!」

「ご無事でよかった………」
 そう言って、イガールが、心底ほっとしたように、大きな息を吐いている。そのさまを見たナディール姫は、なぜか、ひどく胸の奥が、かきむしられるのを感じた。

「…………心配、してくださったのですか……?」

 姫の問いに、イガールは柔らかい笑みを浮かべながら頷く。
「ええ………。姫様がご無事で、何よりです」

「……………!」

 ぐっと、胸の奥が詰まるのを感じる。
 鼻の奥が厚くなり、瞳から、勝手に涙があふれていた。
「あ……………!」
 姫は、慌てて涙を隠そうとする。

 馬鹿、駄目だ。
 こんなところで、泣いてどうする。
 イガールは『役目』で心配してくれているだけ。
 『主君』の『娘』の無事を、ただ、安堵しているだけ。

 彼の言葉に、それ以上の、意味はないのに─────

 だけど、自分は、うれしかったのだ。
 どうしようもなく、うれしかったのだ。

 密やかに『想い』を寄せる人に、自分を案じてもらえたことが────

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