農家の嫁の日記

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zoom RSS 戦う君に、花束を 137

<<   作成日時 : 2017/08/26 01:30   >>

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「本当ですか?」

 不安そうにこちらを見つめてくる義弟を、姫は優しく頷き返していた。

「本当よ? 今まで私が、嘘をついたことがあった?」

「ない………」

「ね?」
 姉の笑顔に、ノゾムは頷き返すしかない。それを見て、ナディール姫もにこりと微笑み返していた。

「聞いての通りです。カライ内大臣、私が留守の間、ノゾムをよろしく頼みます」

「はっ。承りました。姫様」
 姫の言葉に、白髪の気むずかしそうな面を湛えた老人が、静かに頭を下げていた。

「ですが姫様。一言申し上げたき儀がございます」

「何ですか?」

 振り返るナディール姫に、その老人は、鋭い眼差しを投げかけていた。

「我ら閣僚がお待ち申し上げますのは、あくまで姫様、あなた様のご帰還でございます」

「……………!」

 内大臣の言葉に、執務室にいたほぼ全員が、はっと息を呑んでいた。

「どうかそのことを、お忘れなきように!」

 そう言って内大臣が、じろりと王太后を睨み付ける。
「まあ……! なんて無礼なんでしょう!」
 王太后が震えながらそう喚くが、内大臣は、特に気にもとめずに、元の姿勢に戻った。王太后は、しばらく内大臣に、何か言いたげに睨み付けていたが、「お母様……」と、ノゾムに不安そうに声をかけられて、舌打ちしながら視線を逸らしていた。どうやら彼女も、ここは黙ることを選択したらしい。

「分かりました。カライ内大臣。貴方の言葉、しかとこの胸に留め置きましょう」

 姫の言葉に、カライ内大臣は、恭しく頭を下げる。その様子をじっと見つめながら、ハヤブサは、内大臣と話したことを思い出していた。


 ────ハヤブサ殿………。姫様は、死ぬ気でござろうか……。

 それは、少し前のことだった。執務室で、黙々と書類にサインをしている姫を護衛していたとき、カライ内大臣が、そう声をかけてきていた。

「? どういうことだ?」

 話が今ひとつ見えてこないハヤブサは、多少、眉をひそめながら、内大臣に問い返した。姫は、確かに命を狙われてはいたが、自ら死にに行くような気配など、決して漂わせてなどいなかったからだ。

 内大臣は、一つ大きなため息を吐くと、重々しそうに、その口を開いた。

「姫様は、『ノゾム王子に王位を譲る』と、仰っておられた……」

「ああ。確かに、そう言っていたな」

 ハヤブサは、ナディール姫がノゾム王子に話していたことを思い出していた。
 姉が義弟に王位を譲る。どの時代でも、どの国でも、ある話だと思った。
 だから───

「何か、問題でもあるのか?」

「大ありです」

 問うハヤブサに、内大臣は真顔で答えていた。

「我が国にとって『王』とは、特別な存在です。一度王位に就いたら、その人間は、俗世間からは隔離された存在となり、死ぬまでその『王位』を全うされるのが通例です」

 ハヤブサは、黙って耳を傾けていた。内大臣は、言葉を続けた。

「しかし姫様は……義弟であるノゾム様が成人なされたら、王位をお譲りになるという……」

「そうだな」
 頷くハヤブサに、内大臣は強く頭を振っていた。
「よくありません! これは非常に、よろしくないことなのです!」
「…………?」
 話が見えず、眉をひそめるハヤブサに、内大臣は訴えるかのように言葉を紡いだ。
「良いですか!? 先程も申しましたが、姫様は『代理』とは言え、王位を継いでいるお立場であらせられます! つまり姫様はもう、『人間』として、俗世間に戻る資格を、失っておられるのです!」
「……………!」
 内大臣の言葉の内容に、ハヤブサは思わず息を呑む。それに対してカライ内大臣は、小さく自嘲的に笑った。
「そのようなこと、下らぬ、と、思われるのでしょうな」
「……………」
 ハヤブサは、どう反応をしていいのか図りかねたから、無言を貫く。内大臣は、構わず言葉を続けた。
「今の時代において、王位に就いたぐらいで、『人間の資格を失う』などと、ナンセンスな話だと思っております。しかし同時にこれは、『王位を巡っての権力争いを避ける』という事柄に関しては、絶大な効果を発揮している、と、個人的には考えております」

 ユリノスティ王国における『王』は、1世代に1人、と、厳格に決められていた。良くも悪くも。
 王位に就いた人間は、この国の象徴の座に座る代わりに、世間一般から、完全に隔離された状態になってしまうのだ。
 そしてそれは、王位を退位した後も、その状態は持続された。
 『現人神』に近い立場に立つ『王』に、最早『人間』の価値観、権利などは適用されない。
 だから、歴代の王たちは、その命が尽きるまで、『王位』に座り続けるのが一般的だった。
 勿論今までの歴代の王の中には、様々な理由で、王位を次の世代に譲った者たちもいる。しかし、王位を明け渡した者たちが、その後、国の記録の舞台に立つことはなかった。その存在は、抹消されたに等しかった。

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